5月28日号

『失敗は成功のもと』~レジリエンスを高めよう

校長  小 林 香 織

 春の大型連休も終わり、いよいよ下幌呂にも運動会の季節がやってきました。子供たちは6月7日の運動会本番に向けて、赤組白組ともにスローガンを決め、それぞれの競技に向けてチーム一丸となって練習に励んでいます。

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 運動会では、チームで、個人で様々なチャレンジが繰り広げられます。それは運動会当日だけではなく、運動会前の準備や練習の時間にも行われています。「去年負けた◯◯さんに、今年は勝ちたいから□□の工夫をしてみよう!」とか、「リレーで勝つために、バトンパスの精度を上げよう」など、いろいろな工夫を凝らし、チャレンジをします。もちろん、全てのチャレンジが成功するわけではありません。チャレンジですから、当然「失敗」もあります。「最後まで走りきれなかった」「時間内に終われなかった」「できると思ったのに、うまくいかなかった」などなど…。

 失敗から立ち直るための力を「レジリエンス」といいます。 もともとは物理学の用語でボールなどがへこんでも元に戻る「弾力性」という意味を持つ言葉です。

 空気が十分に入って丸いボールは、地面にぶつけた瞬間にはへこみますが、弾力性によって跳ね返ります。このしなやかに跳ね返る力こそがレジリエンスです。

 では、このレジリエンスはどのように高めるとよいのでしょうか?実は、レジリエンスを高めるために必要なことは、「小さな失敗」です。「我が子には失敗させたくない」と思う親心はわかるのですが、この「失敗」はどのレベルの失敗でしょう?「人生においての失敗をさせたくない」のであれば、小さな失敗をたくさん経験させて、失敗を乗り越えさせる力を子供に付けてあげることが必要です。逆に、「小さな失敗すらもさせたくない」というのは、子供の生きる力を奪っていることと同値です。

 最近は些細な失敗ですぐに「◯◯ができなかった私には価値がない」と考えてしまう20代くらいの若者が増えているようです。そんな若者の姿を見ると「小さな失敗を乗り越えてこなかったんだなぁ」としみじみ思います。小さな失敗を乗り越えると、小さな「自信」が芽生え、「自尊心」も生まれます。また失敗を乗り越えるために誰かに相談することで「コミュニケーション能力」が育まれ、乗り越えた経験から「これくらいなら大丈夫」という「楽観性」も生まれます。「レジリエンス」は、「自信」「柔軟性」「自尊心」「体力」「ストレス対処力」「忍耐力」「コミュニケーション能力」「楽観性」「感情コントロール」など、様々な力が合わさったものですから、これらの力を子供のうちから少しずつ身に付け高めていくことが、いくつになってもくじけずに前を向いて進んでいく原動力になっていきます。

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 子供に「失敗させない」ではなく、子供が「(小さな)失敗をしても自力で乗り越えた」ことに多くの賞賛を送ることが、子供たちのしなやかな大人に向けた成長に直結するとしたら、やはり大人の側の「見守る」が大事なのだろうと思います。学校でも家庭でも地域でも、手を出したくなる所をぐっと堪えて、「見守る」支援を進めていきたいですね。